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したいこと 思索

勝っても負けてもいいからやるのが大事

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みなと:なんか…さっき言ってた一手に引き受けるみたいな意味においても、スポーツって良いと思ってるというか

松田:あー、はいはい。

みなと僕は何のためにテニスをやってるのかなって考えたときに、やっぱり試合をする感じが良いというか…だって別に、試合に出ることで世界新記録を出せるわけでもないし、試合で初めて得られる身体性の拡張があるわけでもないし、だったら普通に打ってるだけでよさそうなものじゃん。

松田:まあそうやんね。

佐藤秀明編(2019)『三島由紀夫スポーツ論集』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

佐藤秀明編(2019)『三島由紀夫スポーツ論集』岩波文庫

みなと:でもなんて言うのかな…ちょっと具体的なところから話すと、テニスの試合のときってまじで一人なわけ。まあ当たり前なんだけど。

松田:うんうん。

アホなので「(ダブルスは…?)」とか思ってました

みなと:コートには自分と相手だけがいて、自分がどうするかと相手がどうするかによって全てが決まると。それで、プレーの上でこうしたいとかはもちろんあるんだけど、それ以前にやるからには当然勝ちたいっていう、そこが目標としてセットされる感じがあって。

松田:うん。

みなと:その上で…ひとつひとつのプレイが全てではないんだけど、でもその積み重ねの中で、特定のプレイがキーポイントになる瞬間がとかがあるわけで。

松田:はいはい。

みなと:後から振り返ってそう思うのはもちろんなんだけど、やっている本人としてもその場で分かったりするんだよね。「あ、これでもう決まったな」みたいな。

松田:うん。

みなと:そこに…まあ逃げずにって言うと言い過ぎなんだけど、でもそこに言い訳せずにやるっていう、そういう感じが最近自分的にはしっくりきてて

松田:なるほどね。

みなと:たぶん…良いプレイなんてできないんだよ。練習でやってきたことも全然できないかもしれないんだけど、でも絶対にこのポイントは大事だし、取らなきゃいけないと

松田:うんうん。

シンジくんかよ

c 世界一的を得たシン・エヴァの感想

みなと:そういう中でやることに意味があるというかね。まあそう言っちゃうと、なんか綺麗に聞こえるんだけどさ。

松田:でも全体性を引き受けているって感じはあるね。清濁一気飲みというか。

祇如今有一箇佛魔、同體不分、如水乳合、鵝王喫乳。如明眼道流、魔佛俱打。你若愛聖憎凡、生死海裏浮沈。

祇だ如今一箇の仏魔有り、同体にして分かたざること、水乳の合するが如きも、鵝王は乳を喫す。明眼の道流の如きは、魔仏俱に打す。你若し聖を愛し凡を憎まば、生死海裏に浮沈せん。

たとえばここに仏と魔が一体不分の姿で出てきて、水と乳とが混ぜ合わさったようだとする。そのとき鵝王は乳だけを飲む。しかし眼力を具えた修行者なら、魔と仏とをひとまとめに片付ける。君たちがもし聖を愛し凡を憎むようなことなら、生死の苦海に浮き沈みすることになろう。

Source: 入矢義高訳註(1989)『臨済録』岩波文庫

入矢義高訳註(1989)『臨済録』岩波文庫

みなと:そうそう。そういうのをね、最近テニスをやっている中ですごく思ったな。

松田:なるほどね。

みなと:あとはさっき言ってた、何かであることによって、それと背反な別の何かでないことへの批判に晒されるって構造が分かりやすいんだよね。要は負けっていう形があるわけでさ

松田:うんうん。

みなと:何かをAとして選択することは、必然的にそれがĀではないと言い切ることにもなるわけで…

松田:うんうん。

みなと:それはもしかすると、他人と共有できないことである可能性もあるわけで。

松田:まあAって言うと一般性が高そうやからXと言い換えておくけど、何かをXと呼んでそれを選択することは、それがXと背反なものである可能性も、自分がそちらを選ぶ可能性も退けることなのであって、さらにはそれをもってXとしたことへの批判も引き受けなければいけなくなるしね。

Source: commmon

c 「Aを選ぶ人生じゃなくてXを見出す人生を選べよ」

みなと:だから…なんか変な言い方だけど、負けることに慣れるんだよ。

松田:あー…うん、うんうん。

負けることに慣れていない顔

みなと:勝ち負けっていうのは確かに絶対的なんだよ。試合をやっている限りにおいては、そこでは絶対的なんだけど…

松田:しかし、今ここで負けたことが問題かと言われると…

みなと:そうそう、別にそうではないっていうね。でも、やっぱりそれはそれで引き受けなければいけない感じがあるというか、その瞬間はそれが全てかのように取り組んでいるわけだし…

松田:いやー、うんうん。

みなと:そこに言い訳をしない感じというか…そういう意味において、勝負事って結構意味があるんじゃないかなって。まあね、人生におけるより重要なことの、小さな練習に過ぎないのかもしれないけどね

松田:いやうん、でもすごい分かるよ。

もちろん、下のページで言っていることと今回の主張は矛盾しません

c 当たり前ですけど、人生勝ち負けとかじゃないんでね

みなと:まさにオリンピックとかそれの極みなわけじゃんか。それこそ昨日トランポリンを観てたんけど…

松田:世界選手権でも勝ってたのに着地でミスっちゃった子やんな。

トランポリン森「技術だけでは駄目」 予選敗退の五輪振り返り – 日本経済新聞

みなと:そうそう。あの子とかめちゃくちゃ悔しそうな顔してたし、あるいは伊藤美誠の負けたときの感じとか、あれには可哀想とかじゃない何かを見たというか。

松田:いやぁ…そうやんな、やっぱそういうことやんな。なんか…もちろんそこまで真面目に取り組んでいたわけでは決してないんだけど、大学生のときにやりたいと思ってスケボーをやってみたけど、やっぱ何かを見て想像してた通りには全然できないわけ。そこですぐ飽きてやめちゃったのとか、今ならもうちょっとやりようがあったと思うよな。

中垣:自分は結構音楽を知っている、世の中におるDJと呼ばれる人の7割よりはおれの方が詳しいと。そういう自負があると…できひんねん。

松田:なるほどね。

中垣:いくら音楽に詳しくても、DJとしてはそいつらの下に立つわけよ。そこにわざわざエントリーするか?っていう。これが批評家とプレイヤーみたいな話で、世の中では大抵の場合はプレイヤーより批評家の方が知識はあるねんけど、でも批評家はプレイヤーではなくて、何もできないねん。で、批評家はいつでもなれるねん、知識さえあればいつでもなれる。でもプレイヤーはそこの恥を捨てる覚悟がないとできなくて、で、そこの恥って若いうちはあんまりないから、やろっかなって思ってすぐできちゃうわけ。

Source: commmon

c 若いうちしかできない

みなと:だし、それが一回限りの場として、そこでやらなきゃいけないってふうにセットされてることで、より強くそのことを意識するというか

松田:うんうん。いやぁ…そういうことやんな。

みなと:その上で…まあなんて言うんだろう、勝負を楽しんでるような人っているじゃん? そういうふうに自分もなりたいと思うな。

松田:なるほどね。そうやんね、そうやねん。その辺り、なんか最近になってようやく意識できるようになってきたって感じやな。今までずっと勝負とか嫌いやったもん。

みなと:うんうん。

松田:「それ、必ずしも僕の興味のあることではないのですが」みたいなね。まあその点に関しては今でも妥当だとは思うけど、それに加えて、勝負に参加することでわけの分からん価値観に巻き込まれるような気がして、それもあって勝負を避けてた。その後者については、今ではやや不健全であった気がしなくもない。

みなと:あー…分かるよ。勝ちとか負けっていうラベリングを貼られる感じというか。

松田:そうそう。もちろんね、勝負を通じて押し付けられるそういった価値観が、自分の信じているそれとあまりにかけ離れているというのは、その勝負を避けるのに十分な理由になる気もするんだけど…とは言えね、今ならその辺も込みで、フラーっと行ってフラーっと負けて帰ってくることもできるのになとは思うよな

c 「僕は僕で、僕という線では結構やらしてもらってるんですよ」

2021年7月31日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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