中垣:このあいだ会社の同期会でご飯の話になってん。
松田:うんうん。
中垣:まあそういう話ってあるやん。でもおれ、そういうの全然ないの。
松田:うんうん、そうね。
中垣:飯はおれ一人で食うのが一番楽しいねん。
松田:うんうん。
中垣:だからご飯のシェアもすごい嫌い。
すぐご飯のシェアをしたがるやつは、ポイントカードいっぱい持ってるやつ、ホテルのクラブラウンジにずっといるやつ、しょっちゅう「興味深い」URLをシェアするやつらと同じ…つまり、機会損失を恐れるあまり本当に大事なことに一生コミットできない、「損をしたくない」人なのです。
中垣:
松田:笑 かわいそう。
孤独は最高のラグジュアリー
中垣:で、そこにいた男二人は「一人で食べるUberEats最高じゃない?」って。でもその子は、
松田:へー、そうなんや。
中垣:おれ一人でご飯作るの超好きやけどな…とか思ってんけど。
松田:
中垣:…ほんまに?
松田:ただ、ここで言う美味しいっていうのはやや話が違って、別に一人で食べているときでも、味への感度をMaxまで高めることはできるねん。
中垣:うんうん。
松田:ただ、そもそもおれは彼女とおるときじゃないと食事に興味が持てないねん。
ドッグフードさえ食べていればいい犬が羨ましい
松田:でも彼女とおると、彼女は食事が好きとか、それ以外にたいして共通の話題がないとかの条件があって、積極的に食事を楽しむことしてる。
中垣:はいはい。
松田:でも別に、一人でおってもMax楽しむことはできるねん。みんなも案外そうで、
中垣:それはちょっと思った。
松田:そこでさ、
中垣:「楽しい」と結び付いた「美味しい」じゃなくて、ほんまに美味しく感じられるのはなぜかっていう話やんね?
松田:そうそう。例えば中垣がサンドイッチにはまって毎朝作ってたときって、サンドイッチに誠実な興味を持ってそれをやってたわけやん。でも
中垣:はいはい。
松田:だから、人と一緒にいて楽しいっていうのがまずあって、
中垣:それはあるんかもね。確かにありそう。
松田:この理屈には結構思うところがあって、世の中の人は、
中垣:うんうん。ネガティブな認識ってわけでもなく、やんな。
松田:そうそう。
ディズニーランドってすごいよね。23歳で初めて行って超感動した
中垣:ありそうありそう。
松田:それで言うとおれは、やっぱりご飯は一人で食べると美味しくない…というか興味を持てない。
中垣:あー。
松田:でも彼女とおるときは、自分の好きな物のことばっかり考えてるわけにもいかんから、そこで興味を持ち得る対象に認知資源の再配分が行われているって感じ。
中垣:うんうん。
松田:だからあれやで、
中垣:あー、そういうことね。
松田:蕎麦食ってるときに彼女の「美味しい」が飛んでくると、結構しんどいものはある。
中垣:そういうことか。そうやんな、
松田:それは分かるな。彼女と蕎麦食ってても「歯応えが〜」とか「香りが〜」くらいしか言わへん。おれが紡ごうとした言葉がスポイルされるねん。
中垣:そうやんな。
松田:笑
中垣:それでも人と食べる方が美味しいって言うのか、黙々と食べるのかやんな。もし後者なら、
松田:間違いない。
2020年7月3日
Aux Bacchanales 紀尾井町
赤坂Bizタワーのレストランフロアにあるやぶそば。はっきりとした香りの喉越しのよい蕎麦に、辛過ぎないつゆ、シャンとした薬味など、目立った特徴はないながらも全てにおいて水準が高い。店内は明るく、商業施設のレストランフロアでの通し営業であり、接客も盤石ながらしつこくないので、池波正太郎の『男の作法』で述べられているような東京蕎麦カルチャーを初めて実践するにはちょうどよいお店である。
ここで蕎麦に親近感を覚えるようになれたら、次はすぐ近くの「室町 砂場」に行ってみましょう。