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ファッション 人生 思索

不誠実な中流根性

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中垣より多くを知っているべきか、みたいなことを中学のときからすごい考えてんねんけど…

松田:はいはい。

中垣:例えばおれは音楽に詳しくて、いろんな音楽の楽しみを知っている。これは豊かなことだと。

c ハウスミュージックのプリミティブな喜び

松田:うんうん。

中垣:一方で、例えば当時やったら、AKB48しか聞かへんやつもいたと

Source: AKB48/YouTube
Source: AKB48/YouTube

J-Pop暗黒時代

c 今のJ-Popはすごい

中垣:でもそれは音楽体験としては貧相なもので、おれからしたらあり得ないと。 もっと本物の音楽がこの世にはあると、そう思うわけよ

松田:うんうん。

中垣:ただ彼らにそれを問いただしても、「でもおれはAKBを聞いているときは幸せなんだ」って言うわけやん。

松田:はいはい。

中垣:しかもなんならおれも、ジャズマニアに「ジャズの方が豊かだよ」って言われても、別に今ジャズ聞きたいとは思ってへんし…とか思うわけよ。

松田:そうねそうね。

中垣:そうなったとき、つまり「とは言えおれは別にこれでいいし」って言われたら、それ以上は何も言えないわけやん。BMWに乗って豊洲のタワマンに住んでる人は、彼は彼なりにそれを豊かやと思ってる、彼なりの幸福を覚えてるわけ。

中垣:でもやっぱり、もちろん現時点でそれが楽しいという体験は否定しないけれども、それをより拡張していく、豊かさをより豊かにしていく姿勢は大事なんじゃないかなと、今となっても思うねん

松田:うんうん。

中垣:ただ、おれ個人の生き方としてはそれでいいねんけど、彼らに対してなおよいものがあると、そんなものはまだまだ全然だと説き伏せるにはどうしたらいいんやろうって

松田:はいはい。

中垣:で、それを言うために、我々が普段から言っている「人生における~」みたいなことを言い出すのもちょっと違くて…

ですよね

松田:もっと実効性のある、ね。

中垣:そうそう。もっとシンプルな話として何か言えることはないかなって、すごい思ってる。

松田:確かになぁ。

中垣もちろん豊かさのひとつの側面として、全ては個々人の主観的な感じ方次第という話はあって、そういう意味ではAKBでもジャズでも、BMWでもカローラでもパガーニでもいいと。

パガーニ ウアイラ ロードスターBC
Image: @OfficialPagani/Twitter

カローラの200倍円

c 小さな喜びを拾えるようになろう

中垣:なんだけど、一方でやっぱり豊洲のタワマンがダメなのは間違いなくて、ただそれがなぜダメなのかっていうことがうまく言えなくて

松田:おれが思うのはさ、例えば子供のとき、今ではその上位互換を知っているけれども、当時はそれがチョー最高って思ってたことってあるわけやん。

中垣:うんうん。あるある。

松田:例えばなんやろう、プッチンプリンとかもそうかもしれん。さっき中垣はクレームブリュレ食べてたけどさ、別にそのクレームブリュレエクスペリエンスによって、プッチンプリンに対する当時の歓喜が否定されることはないやん。当時はこれこそはと思ってたわけで、その限りにおいては大いに結構なわけ。

中垣:あー、そうやね。

松田:要は「おれはおれなりに豊かだ」って言ってるのがなんで糾弾されるかって、それはお前の選んだお前の豊かさではない、って話やと思うねん

中垣:はいはい。

松田:それがなんであれ、もしそれに全身全霊で豊かさを認めているんであれば、それは大いに結構やねん。さらに言えば、いずれその一歩先に行くことも必然やと思うねん。

中垣:うんうん、まあそれはそうやんな。

松田:要は今どこにいるかが問題なんじゃなくて…

中垣微分した値が正であれば…

松田:あ、そうそう笑

人生の線グラフにおいて最も重要なことは縦軸の値ではなく、任意の地点で微分した際の値が常に正であることだと思います。

Source: 上には上おり過ぎ問題 – commmon

c 上には上おり過ぎ問題

松田:でもこれ、あんまメイクセンスしてもらえないねんけどな。

中垣:そうなんや。河東は超感動してたよ。

松田:普通の人にこれ言っても「…微分?」ってなっちゃうから。

みんなもしかして高校出てないの?

松田:でもそういう話で、河東の言うところの「ポジティブなアティチュードのある好き」ならええって話やねん

中垣:あー、はいはい。

松田:ほんで問題は、「別におれはこれでいいし」とか言ってるやつは大体において…別にそれでいいとなんて思ってないねん

中垣:常に「?」がつきまとってるというか…

松田彼らは主体的にそれを選択しているのではないし、さらによくないことには、そのことに対して後ろめたさを感じているくせにそんなことないフリをしてるねんな。

中垣:分かる分かる。大学のテニサーで金髪にする、みたいな。イケてるを他人に定義されて、それ通りにして安心するみたいな

松田:あー、そうそう。ほんまにそれが大事なんかって言われたら内心揺らぐねんけど、さもそんなことはないかのようなふりをしている、そこに問題があるんじゃないかな。

中垣:はいはい。

松田:だから「もっといいものがあるよ」って言うんじゃなくて、「それの何が好きなん?」って問う方がまだ実効性はあるんちゃうかな。

中垣:そうやんな。でもどうしよう? 同期そんなやつばっかやけど、そんなん聞く気起こらへんで。「それの何がいいの?」なんて聞いても何にもならへん。たぶん一瞬で嫌われるし

同期は仮想敵じゃないぞ

松田:笑 だからあれやって、目をキラキラさせながら、誠実な好奇心を持って聞くねんって。

中垣絶対どっかで取ってつけたような理由が出てくるで。「これは~」って。

松田:そらもう、「なぜ」を5回重ねるしかない。

Five whys – Wikipedia

中垣:あー。

松田:あなたという個人に誠実な興味を持っていますベースで「なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?」って聞いていけば、相手としてもどっかで行き詰まって多少のモヤモヤを感じて、その気持ちをこっそり持ち帰ってくれるよ

中垣:…まあそうやな。ただそこまでの興味が無いからね。

松田:まあまあ。

中垣:言う気が起こらへんよね。

松田:そういう期待をしないもんな。

中垣だってそんなん言い出したら全部やもん。一回死んだ方がいいって言っちゃいそうやもん

なぜを10万回重ねた結果「なんでお前の母親はそんな父親と結婚してん」とか言っちゃう

松田:笑

中垣:実際にいろいろ聞いてみたらどうなんのやろ。結局「そこまでの興味は無い」とか言われそうやな。

松田「じゃあ君の一番興味のあることを教えて」って言えばいい。

中垣:でもそう言われたら「中垣ほどいろんなことには興味を持っていない。でもおれは幸せだから」とか言い出しそう。

それはもう自分の人生にも周囲の世界にも興味が無いってことで、やっぱ一回死んだ方が…

松田:うーん、それを言わせたら負けやんな。だからやっぱり、ほんまもんのキッズの好奇心で聞かなあかんで。こいつは自分のの何かを損なおうとしているって思われたらあかんわけやん

中垣:あー、そうやなそうやな。ガード作られちゃうと終わりやもんね。

松田:そうそう。まあでも難しいよな、こっちが嘘つかんとあかんわけやし。

中垣:そうやで、やっぱ嫌やで。

松田:笑

中垣:なんか同期で…別に仲は良いから、彼のことがクソ嫌いとかではないねんけど、東大で、大学生のときにベンチャーで働いてたやつで、別におしゃれでもなんでもないし、服好きとかでもないやつがおんねんけど…

松田:はいはい。

中垣ベンチャーの、あのスマートライフ感あるやん

松田:あー、はいはい。分かるよ。

中垣:別に家になんもこだわりないくせに、電球をフィリップスのhueに変えましたとか。

フィリップス スマート電球 hue
Image: PHILIPS

なんじゃこのセックスライティングは

松田:うんうん。

中垣echoを導入したら洗練されたライフスタイルが始まる…とか思ってる連中おるやん。完全食がおしゃれだと思ってるやつとか。

完全食信仰は人間の身体性の滅却に他ならないので、そういうやつは人工知能の台頭とともに世界での居場所を無くすはずです。たぶん。

松田:はいはい。

中垣よう分からんアプリと連動するメンズ美容系グッズとか。なんかそういう感じのやつがおるねん。

松田:あかんおもろい笑

中垣:そういうのをインスタにあげて「導入してみました」とか、なんかオーセンティックじゃない店の、別にアプリとは連動しないけどそういうノリのあるコーヒー豆を買うみたいなやつやねん

松田:はいはい。

中垣:コーヒーを煎れる器具も、別にアプリとは連動しないけどそういうノリのあるやつで

PHRASE OF THE WEEK:
「別にアプリとは連動しないけどそういうノリのある〜」

松田:笑

中垣:まあそういう連中っているわけじゃないですか。あいつらは大体MUJI Labo着てるんやと思うけど。

ラインナップ全てが日本製、8,000円の釣り編みパーカーまで出していたMUJI Laboも今は昔

MUJI Labo – 無印良品

松田:そうね。

中垣あいつらはどうやって叩き直せばいいんかな?

松田:クラブに連れてったらええんちゃう? ホステスのおるクラブ。ああいうキラキラブリンブリンな価値観で殴って「こういうの普通に楽しいじゃん?」って問い直す

麻衣子

中垣:あー、そういうこと? お前ら去勢されたみたいになってるけど…ってこと?

松田:セックスに話の重心を置きたいわけではないけど、まあそうやね。もっと素直に惹かれるものに惹かれろと。ノームコアとか言ってんなと。キャデラックとセックスはこの世にある最高のものうちのの2つなんだよってことを教えてあげなあかん。

中垣:まあそうやんな。あれもそうやんな、ベンチャー社長のテーラードジャケット問題

松田:あれにはね、こっちがバチバチのドレスアップで対抗する。フルオーダーですが何か?って。で、「君の格好だと今から行くレストランには入れないんだよ」って言う

ビーサンでパレスホテルのバーに行って追い出されたことあるくせに

中垣:あー、そうやね。昔ならさ、社会全体がそういう雰囲気で、良くも悪くもある種のスノビズムが漂ってたわけやん。でも今はそれがなくて、ちょいダサちょいオシャ中流層がはびこっててるよね

むしろ現代の特徴は、凡俗な魂が、自らを凡俗であると認めながらも、その凡俗であることの権利を大胆に主張し、それを相手かまわず押しつけることにある

Source: オルテガ・イ・ガセット(2020)『大衆の反逆』岩波文庫
オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

オルテガ・イ・ガセット(2020)『大衆の反逆』岩波文庫

松田:だからあれや、そういう中途半端なやつと会うときは、パレスホテルの総支配人みたいなコンサバ中のコンサバを右に、左にはフロイド・メイウェザーみたいなやつを連れて行けばいい

Source: @8th_month/Twitter
Source: @FloydMayweather/Twitter

中垣:やばいな笑

松田彼らはね、そういう価値観を知らんとあかんねん

中垣:でも確かにそうやんね。アプリと連動するコーヒー豆に生きがいを感じられましてもって感じ。

松田:そうそう。

中垣:どうすればいいんかな。結構課題やとは思ってるよ。もっと積極的に見出せる豊かさがあるよってことを伝えたいわけじゃないですか

松田:そうやんな。誰の実感にも沿っていない形で単純化されたゲームにコミットして、知った風にすっきりした顔をしてるのはおかしいよね

中垣:おかしいおかしい。でもやっぱ難しいんかな? 石崎の顧客でさえむっちゃダサいやん。前にamy mossのブレスレット見に行ったときも、イッシーと全く同じ格好してるやつがおったやん。

AMY MOSSオーダー会開催 – ATELIER HISTORIC INSTRUMENTS

松田:あー、確かにな。アテリエでさえそうやもんな。やっぱそうなっちゃうんかな。

中垣:いやー、むずいな。

2020年7月24日
Aux Bacchanales 紀尾井町


オルテガ・イ・ガセット
HeaderImage: EL PAÍS

スペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセット。自らに特別な才能や義務を認めず、その正当性を多数性によって主張する「大衆」による社会の支配を批判する主著『大衆の反逆』で有名。
思想の体系化にこだわらず、エッセイやジャーナリズムを通じて自身の思想を展開するスタイルであることに加え、この春に岩波文庫から新訳が出たこともあり、日本語でも非常に読みやすい文章で手に取ることができる。