なつき:留学してすごいよかったと思ってることがひとつあって、向こうの授業ですげえ強調されたんだけど、
松田:へー。
なつき:
松田:それは確かにいいな。
なつき:で、このあいだTwitterで見たんだけど、各国の調査で、
日本財団「18歳意識調査」第20回 テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査) – 日本財団
中垣:へー。
なつき:なんか、日本では若者が世の中を変えられると全然思ってないんだなって。その理由が何なのかはちょっと分かんないんだけど、
中垣:確かに。
なつき:なんて言うか、意識高いと言われちゃうような感じ? だけど、例えばベジタリアンやってるような人って、ベジタリアンをやることで地球温暖化の防止とかに自分が貢献できると本気で思ってるんだよね。まあそれが正しいかどうかは別として、信じて行動に移すっていうのは、すごくなんか尊敬できるなって。
松田:はいはい。
なつき:で…
中垣:うーん…
なつき:もうちょい言うと…『現代思想の冒険』だっけ、あの本の中で、思想上の問題として社会の捉え方を考えたときに、例えばおれが捉えている社会のあり方は中垣のそれとは全く違うから永遠に共有し得ないって考え方もあれば、何かしらこう、同じ捉え方をし得るっていう考え方もあるって言っていて。
なつき:で、
なつき:そういうのを踏まえて考えた結果、中垣は社会を変えられないって思ってんだろうなって話なんだけど笑
中垣:あー、なるほどね。でもそれは全然逆で、それこそ今言った、何かしら共通部分を見出せるかどうかについて前に建築の同期と揉めたことがあるねん。おれは何かしら共通の見方ができるはずだって言ってんけど、「それはエゴだよ」って言われてすごい揉めてん。だからおれは全然、変えられると思ってると思うで。
その内容がなんであれ、ある主題に対する立場の相違について揉めている限りにおいて、共通の見方を見出し得るという前提に既に立っていると言えるんじゃないでしょうか。
松田:まあさ、変えられると思っているかはともかくとして、相手を理解しようとするスタンスは中垣だってあるよな。
中垣:そういうスタンスやで。
松田:いずれにしろ、他者理解は原理的に可能やと認識してると。
中垣:そうそう、そこは信じてる。ただ社会を変えられるかどうかっていう話になると…
松田:あー。
中垣:まあ分からへん。他者との間に共通の理解を見出そうとするのって結局社会を変えるってことじゃね?って言われると、それはそうかもとも思っちゃう。
なつき:変えられるけれど、変えたいとは思ってない?
中垣:まあそうね。変えたいと思ってないから、そもそも変えられるということを意識したこともないけど…
松田:もうちょっと器用に言えばいいのに笑
中垣:だから…うーん、人は何かしらの違和感をきっかけに行動するのだとすると、その違和感の原因を社会に求めるのか自分に求めるのかって話で、おれは自分に求めちゃうな。
松田:あー、はいはい。
中垣:
きむ:まあまあ。
中垣:手の届く範囲で影響与えたいというか、
なつき:ちなみにおれも、どちらかと言うと社会は変えられないと思ってて。だから投票とか興味無かったんだけど、でも今なら…
中垣:え、そういうこと? 違うよ、それはなんか薄っぺらいよ。むしろ世界を変えたいとか思ってたら、別に投票なんて行かなくてええねんって。
なつき:いやいや…
中垣:いや、これはまじで。社会を変えるって言って投票行くやつは一生そうやってろって思うね。そんなやつ、仮に80年代に生きてたら、CMで見たもんそのまま買ってたような人間やで。
確かに、それで社会が変わると思って選挙に行くやつはアホだと思います。しかしもちろん、それで社会が変わるかどうかに関わらず、選挙に行くことは非常に意義ある行為だと、全く別の理由から思いはします。
匿名:東浩紀っているじゃん。彼のやってるサロンで高校生が、
中垣:うん。
匿名:それに対して彼は、自分は歳を取っているから社会は変わらないって分かってるけど、
【 #ゲンロン友の声 】なぜ日本を良くしたいと思うのですか? genron – note
中垣:はいはい。
匿名:で、別に哲学科とかの人間が社会を変えられないなんて、周りから見たら分かるじゃん。それでも抽象的なモチベーションとして、自分が何か影響を与え得ると信じたいのかなって。
中垣:それ、そもそもそういう話なんかね? まあそういう話ならそういう話でよく分かるねんけど…
松田:実際そうじゃないと分かっててもって…なんか、ただのダブルスタンダードに思えるねんけどな。
中垣:実際世界を変えられるかどうかに焦点が当たっているんではなくて、変わる希望を持てるかどうかっていうのがその人の言ってることじゃないん。
松田:
中垣:結構そういうことってあるくない?
松田:なくない?
匿名:彼のアドバイスとしては、自分としては変わらないと思うけど、お前は変わると信じろっていう言い方になるって言ってた。
きむ:
松田:ね、ちょっとよく分からへん。そもそも社会が変わらへんって話からしてよく分からへんしな。変わるやろ。
中垣:それはそうやね。
きむ:社会が変わるって何?
中垣:まあ東浩紀がなんて言ったかはどうでもいいねんけどさ、そこで興味深いのはあれじゃないん、
匿名:現代思想が本当に社会を変えると思ってやってたんですよ、って話じゃないん?
中垣:あ、そういうことなん?
松田:やってた限りにおいてはそうなんやろ。
匿名:正直に答えるなら今はそうは思ってませんって話でしょ。
松田:でも今も現代思想をやってんねんやろ、なんでなん?
匿名:若い頃は社会を変えることをモチベーションにしてたけど、今は別のものがあるってことでしょ。
松田:まあそうか。
きむ:今は普通に、
お腹減るとかトイレに行くみたいに現代思想をやる、いいですね
中垣:なんかそれでも、
きむ:モチベーションというものの唯一の由来だと。
中垣:そう、おれはそう思ってる。
匿名:学会で発表するとかも、言ってしまえばそうだよね。
中垣:おれは、
匿名:最初になつきが言っていたような意味だよね。おれも別にそういう意味で社会を変えられると思ったことはないけど、でもなんだろう、別に国によってはそう思っている人もたくさんいて、哲学科の人間みたいに、側から見るとあまり実際的じゃないように見えても、そういうことをモチベーションにやってる人もいて…
中垣:うんうん。
きむ:その人は実際的じゃないとは思ってないんじゃない?
中垣:
When you grow up, you tend to get told the world is the way it is and your life is just to live your life inside the world. Try not to bash into the walls too much. Try to have a nice family life, have fun, save a little money.
Source: Wikipedia
That’s a very limited life. Life can be much broader once you discover one simple fact, and that is – everything around you that you call life, was made up by people that were no smarter than you. And you can change it, you can influence it, you can build your own things that other people can use.
The minute that you understand that you can poke life and actually something will, you know if you push in, something will pop out the other side, that you can change it, you can mold it. That’s maybe the most important thing. It’s to shake off this erroneous notion that life is there and you’re just gonna live in it, versus embrace it, change it, improve it, make your mark upon it.
I think that’s very important and however you learn that, once you learn it, you’ll want to change life and make it better, cause it’s kind of messed up, in a lot of ways. Once you learn that, you’ll never be the same again.
松田:そうやね。
中垣:なんか、
きむ:いやー、それは違うんじゃない? なんだろう、
中垣:社会に対するフラストレーションってさ…どういう感じなん?
きむ:例えばアフリカの起業家の話なんだけど、その人は元々公務員を目指してて試験を受けたんだけど、公務員試験の結果が家に届かなかったんだって。本当は合格してたのに、郵便インフラが無いために合否が分からなかったと。
中垣:ほう笑
きむ:だから自分で郵便を作ったらしい。それはさ、そうじゃん。
松田:えっらい。
中垣:うーん、そうなんかな。別にそれを社会に対するフラストレーションから…って言ってもいいけど、
きむ:あー、そういうことか。
中垣:おれはそう捉えるな。おれがそれをするなら、そういう動機においてやる。
きむ:あー…例えばじゃあ、
中垣:いや、別にそこまでうがった見方はしないけど…例えば彼が、同じような環境にある他の国に行って「やっぱりよくない」って言ってそこでも状況を変えようとするのなら、それはもしかしたら社会を変えようとしてるのかもしれんけど…
きむ:うーん…まあ確かに、最終的に全てのモチベーションは自分に対するものとして帰着するとおれも思うんだけど、でもなんか、
中垣:あー…うん、ちょっと違う気がする。結局回り回って自分のためでしょ?ってことが言いたいんじゃないねん。そういう話ではなくて…シンプルに、おれには分からないねん。
きむ:うん。
中垣:おれは社会に疑問を持ったことがないねん。
きむ:うーん、じゃあ何だと思うの?
中垣:うーん…
松田:なんとなく中垣の言いたいことは分かるけどな。
きむ:社会じゃなくて教育とか政治とか、そういうもうちょっと具体的な話題に置き換えられるから、だから社会ではないって話…?
中垣:いや、じゃなくて…
松田:じゃなくて、
きむ:あー。
みなと:さっきの郵便の例で言ったらさ、
松田:社会って言うとさ、主語がn-1になっちゃうやん。
中垣:そうそう、そうやねん。まさにそう。
松田:自分と自分以外が1とn-1に分断されちゃうというか。
中垣:そうそう。
きむ:あー、なるほどね。はいはい。
松田:なんで一般化しちゃってるんだって話。
きむ:うん、その説明はすごいしっくりくるな。
松田:だから
きむ:なるほど、そりゃそうだわ。
松田:お前の話じゃなかったっけ?って。
中垣:だからあれやね、
みなと:笑
それによって目に見える形で世界が変わっているかどうかはともかく、我々は日々世界を決定していると考えてみるのはどうでしょう。
例えばある日のお昼にあなたがマクドナルドで食事をとったとして、あなたが実際にどう思っているかには関わらず、その行動の限りにおいてあなたはマクドナルドの存在する世界を肯定しています。もちろんその行動によって目に見えて世界が変わることは、それが単純な現状の肯定であるという点においても、あなた一人の力がわずかであるという点においてもないと言えるでしょうが、いずれにしてもマクドナルドが存在する(マクドナルドが商売として成り立つ)方向に世界を決定したとは言えますし、あるいはもしマクドナルドには絶対に行かないということを実践していれば、もしかすると遠い因果の先で、非人間的な食事のない方向に世界が変わるのに影響を与えていたのかもしれません。
いずれにせよ、それがいかなる類の行動であっても、それ以外の一切に影響を与えることなく何かを実行するのは不可能です。そう考えると、「社会を変えることはできるのか」といういまいちしっくりこない主題とその答えは、我々は日々の一挙手一投足を通じて世界を決定しており、その限りにおいては大いに責任を持っていかなる些事も決定しなければならないというふうに言い換えられるのではないでしょうか。
2019年12月6日
代々木上原 Airbnbの一室