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外国のこと 思索

イラン旅行記 #1

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松田:イランすごかったよ。おれは現地でむっちゃ金持ちやったって話をちょろっとしたけど…

中垣:なんか言うてたね。

松田:イランに対するアメリカの経済制裁のおかげで、『地球の歩き方』の情報から想定していたよりもドルの価値が3倍高かってんな

イラン 旅行
Image: commmon

サンキュートランプ

植竹:笑

松田:だからね、現地で国内線に2回乗って、タクシーも乗りまくって、ホテルも一番いいのに泊まって…一週間で5万円しかかからへんかった

中垣:まじで言ってる?

植竹:まじ?

松田:まじやで。東京やったら一泊10万円近くするような部屋が7,000円とかやってん

テヘラン エスピナスホテル
Image: Iran Welcomes you

テヘランのペニンシュラ

ESPINAS PERSIAN GULF HOTEL TEHRAN – Iran Welcomes you

中垣:まじか。

植竹:すごいな。

松田:でもおれね、そこがしっくりこなくて旅の後半すごくしんどくなっちゃったよ。「こんなのおかしいよ…」って、泣きそうになってた。

テヘランの北部に住む富裕層や欧米的な思想をよしとする学生・文化人が集まるカフェで出会った、同い年の青年の運転する車に乗せてもらい、テヘランの街を案内してもらいながら考えていました。
その彼は、高学歴ながらも失業率の高さゆえ職につけず、特権的な富裕層の生活に憧れる一方そこに乗り越えがたい断絶を感じており、そこには自分の努力の及ばないところで人生の枠組みが決まってしまっている人の無力感が漂っていたのです

植竹:確かに確かに。

中垣:それアメリカが決めてんねんや。

松田:まあ言うたらそうやで。

植竹:そんな簡単に決まるんだね。

松田:で、イラン人みんなめっちゃ話しかけてくるから、市井の人々といろいろと喋る機会もあってんけど、やっぱり経済制裁でかなり苦しんでるっぽいねんな。制裁のせいで単純に物の価値が上がってるし。

中垣:うんうん。

松田夜行列車で同じコンパートメントになったおっさんとか、月の収入110ドルって言ってた。自分でお店やってるらしいけど、それで110ドル。やばいよな。ほんでみなとにめっちゃ月収聞いてた。

中垣:笑

イラン 旅行
Image: commmon

イラン人お茶飲み過ぎ

松田:「お前はいくらもらってるんだ」とか「そのiPhoneはいくらだ」とか。

中垣:iPhoneとか買われへんよな。

松田:いや、iPhoneは全然あるねん

植竹:パチモン? 本物?

松田:パチモンもあるねんけど基本的には本物やな。し、最新の機種も出回ってて、使ってるやつは使ってる。携帯電話ショップをしてるっていうおっさんとも話したけど、中古のiPhoneの相場は日本と変わらんかった。

中垣:ほう。

松田:それくらい高いのに持ってる人がそこそこおるんは不思議やってんけど、思うに、バザールとかで食料品見たらむっちゃ安いし、電車賃とかも一回乗って2円とかやったから、基本的な衣食住は実はすごく安く済んでるんじゃないかなって

イラン 旅行
Image: commmon

イランのSuica

中垣:そうか…それは自国民にとっても?

松田:うん。食料品とか特に、他のものと比べても安かった。だから生きていくのは簡単な気がするねん

植竹:あー。

松田:そこにはお金をそんなに使わなくて、賃金として入ってくるお金は、携帯電話とかの高度な工業製品に集中的に突っ込むって感じなんちゃうかな。

中垣:それってなんでそんなことが可能になるん?

松田:うーん…制裁のせいなんかな? たぶん国内の産業はそこそこ発展していて、自国内で生産が完結する物に関してはそんなに高くないんじゃない? なんしか食料品は安かったよ

酒井:おれ前にアフリカに旅行行ったとき、iPhoneなんて一度も見ませんでしたよ。みんな中古のAndroidの割れたやつ使ってて。だから先進国以外ではiPhoneは金持ちしか持てないのかなって思ってました

松田:イランね、ちょっと不思議やったよ。後進国って感じは全然なくて、経済的にはいったん成熟している感じはある。遅れた国って感じは全然ない、ただアメリカのせいで困ってるって感じ。

中垣:そうなんや。

植竹:イランか…

中垣:例えば…タイとかってさ、露骨に遅れてる感じするやん。

松田:あーそうそう、タイとかにありがちな、全体的には汚い街やのにスポットスポットでやたら綺麗なショッピングセンターが現れるみたいな、ああいうシーンは一切ない

東南アジアにありがちな、街はクソ汚いのにいきなりピカピカのショッピングセンターが現れるみたいなことがなく、街全体が同じ水準で発展していて、歩道や公園もまんべんなく整備されているという印象でした。

中垣:ないんや。

松田まんべんなく発展してる。あと民度も十分に高い。

植竹:へー、そうなんや。

松田:アカンやつみたいなんがおらんし…あとさ、前にベトナム行ったとき道路横断するのむっちゃ苦労したやん?

中垣:苦労したな。

松田:ああいうのがない。イランも別に、横断歩道の数は少ないし信号にちゃんと従うって感じではないねんけど、お互いに譲り合うマインドがあるからか普通に渡ろうして苦労を感じることはなかった

中垣:それさ、ちょっと話したかったことがあってさ、夏にアメリカに行ったとき、アメリカ人は絶対に運転荒いと思っててんけど実際はめっちゃ丁寧で、あと人が渡るときに譲る度合いが半端じゃなかってん

ハイウェイの国だと思ってたのに

植竹:確かに半端じゃないね。

松田:へー、そうなんや。

中垣:「これおれ渡っていいの?」みたいな。

植竹こっちが渡る気なくても止まるよね

酒井:へー。

松田:なんしかみんな民度高かったよ。文化的な人々って感じ。

中垣:はいはい。

松田:あとそうや、ちょっと感動したんが、お洒落な茶店のテラスみたいなとこで茶しばいてたとき、同い年のイラン人青年に声をかけられてしばらく喋っててんな。で、そこに物乞いの男の子みたいなんが来てん

植竹:うんうん。

松田:ほんでその物乞いの子は、ただお金をくれって言うんじゃなくて、なんかカードみたいなんを持っててそれを買ってくれって言うねんな。そしたらそのイラン人青年はそれを買ってあげてて、そのカードを見せてもらったら中に詩が書いてんねん。ほんで「これは〇〇って詩人の〇〇の一節だ」とか言ってて

中垣:あー。

松田:「あれ、おれら万葉集とか言われても全然分からんけど…」みたいな。自国の古典をちゃんと分かってる感じ結構すごくない?って。

中垣:しかもそれを買うんや。

松田:そうそう。なんかね、自分より貧しい人に対する優しさみたいなんはあるっぽかったよ。

酒井:イスラム圏って感じですね。

松田:でもそこは結構微妙で、確かに彼らの恵んであげるっていう心情はイスラム由来かもしれんけど、彼ら自身としては、自分はイスラムの戒律に従うからそのように行動するって感じでもないねんな

酒井:あー。

松田:むしろムスリムであるっていうことをアイデンティティにしてるやつはほとんどいなくて、それが自分の信じているルールだからというよりは、おれらが食事の前に「いただきます」って言うみたいに、生活に染み付いていて、前判断的にそのように行動しているって感じがあった

中垣:でも外国行ったら結構そうじゃない? 日本が逆に他人に優しくないだけで。

植竹:日本は自分と自分じゃないものの区別がすごく強い気がする。

中垣:世界中どこに行っても、物乞いとかパフォーマーとか、みんなポンポンお金渡してるイメージ。

松田:あー…それで言うとさ、イランは街中に鍵付きの募金箱があったわ。で、それがなんかむっちゃいっぱいあんねん、イラン全土で同じデザインのが。日本のポスト以上の頻度でそれがあって、なんかみんなそれにお金入れてるっぽいねんな。若い女の子がそこに入れてるのも見たし。

マブめギャルでした

中垣:え、すご。

松田:だからやっぱり、弱者のために進んで募金するみたいなマインドは、他と比べてもある印象やったけどな。

酒井:それで言うと、同じイスラム圏でもエジプトはその感じ全然ないですよ。交通事情も最悪で、誰も道譲らないし。騙そうとするやつばっかでした。

松田:笑

酒井:騙そうとするやつばっかですし。

松田:イランはね、騙されるはおろか、多少ぼられそうになったことさえ一度もなかったよ

酒井:へー。

松田信義則があり得んくらい浸透している感じがあった。現地のエージェンシーでイラン国内の航空券を取ってんけど、こういう条件の航空券を取ってくれって言ったら、おれらが財布を取り出す前に勝手に発券しちゃうねんな。

c 【シリーズ イラン】取引における信義則

植竹:へー。

松田:先に発券しちゃって、しかもその時点でおれらは金額も聞いてへんねん。結局言われた額を現地通貨で持ってなかったから銀行で両替してくることになってんけど、それも代わりにしてくれるって言われて、イランはそんな感じなんかなって思ってドル丸々預けちゃったもん。銀行から戻ってくるまで代理店のソファーで待ってた。

人類の誠実を信じてますんで

マット・リドレー(2013)『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房
Image: Amazon.co.jp

マット・リドレー(2013)『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房

酒井:笑

松田:だからなんて言うのかな、自分の提示する金額が過不足のない最も誠実な提案で、それ以上高くするのも安くするのもあり得ないっていう感じがすごくあった

中垣:はいはい。

松田:これが欲しいって言っても、値段はいくらだけど構いませんか?みたいな確認が無いねん。これが欲しいって言ったら先に袋に入れ出すとか、ホテルなら先に部屋を確保しちゃうとか。で、最後の最後で値段はいくらだよって。たぶん向こうの感覚からしたら、最も誠実な値段を返すのが当然のことやから、その確認とかは特に必要無いっぽい

植竹:ふーん。

松田:加えて、これくらいの物に対してはこれくらいの価格っていう気分的な了解がみんなの中で共有されていて、その想定通りの額が返ってくるから最初にわざわざ金額を確認する必要がないって感じもあったな。あらゆるものに最初から値札が付いていて、店先で値切るとかしないって感じの日本に近しいところはあると思う。

中垣:へー。

2019年11月22日
DEAN & DELUCA CAFE 六本木

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イラン 旅行
HraderImage: commmon

エスピナスホテルから見たテヘラン市街。
左上に写っているのはイランで最も高い建造物であるミラード・タワーで、その高さは435mにもなる。2007年に建てられたテヘラン国際貿易コンベンションセンターの一部で、電波塔として利用されている他、中にはホテルなどが含まれている。