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「したいこと」をめぐる問題

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酒井ニートしてたときと比べて、今の方がまだギリギリ楽しいんですよ

松田:へー。ていうかニートしてたん?

酒井:はい、ニートしてました。大学卒業するちょっと前から去年の今頃までは会社やってたんですよ、起業して。でもそれを潰して、バックパッカーしようと思って海外行って、今年の五月くらいに日本に帰ってきて、そっから5ヶ月くらいニートしてたんです

松田:なんかさ、commmonの中で気分的に共有されてる話題として、ニートやってるのと仕事してんのどっちが楽しいか、みたいな話があるねんな。結構みんな、大学生のうちに休学したりで謎のブランク作ってるからさ。

酒井:はいはい。

松田:で、そのブランクの期間より働いてる今の方がまだいいって、中垣とかは言ってるねん

酒井:それめっちゃ理解できるんですよ笑

松田:で、今日来るって言ってる西川、彼女は大学四年生で留年して暇してるらしいねんけど、やっぱりやることが全然無くて辛いらしいねん

c 「やりたいこと」とか別にないんですけど

酒井:いやー、それは結構ありますよ。

松田:だからなんか、酒井のそれもちょっと聞きたいなって。

酒井:おれ一時期めっちゃ本読んでたんですよ、バックパッカーやる前くらいに。2ヶ月くらい部屋に閉じこもって、本読んだり映画見たりで。そのときは言うて楽しかったんですけど、バックパッカーから帰ってきてもう一回ニートしてみたら、なんかどうしても焦りがあるんですよね。周りの人はちゃんと働いてるし、自分は金減ってくし、ちょっとこれはしんどいなと思って

松田:あー。

酒井:適当にフリーランスやろうかなとも思ったんですけど、なんかだるいじゃないですか、営業とかするの。だから結局やらなくて。

松田:笑

酒井:そのとき、人に会いたくないから立川に住んでたんですけど、なんかこう、日々がすごくつまんないんですよね。だから松田さんは結構異常な感じがあって、一人で本読んでるだけだと普通の人はどうしても辛くなるんじゃないかって話はあって。

松田:そうそう。おれがさっきこの話題に興味があるって言ったのも、ニートみたいな状況は別に万人にとって楽しいものではないんだなというか、そこは自身の体感とギャップがあるなっていうところが始まりやねんな。

酒井:いや、そうですよ笑

松田:酒井的には、その生活には何が足りていない感じやったん?

酒井:うーん…でも一番あったのは焦りみたいなものだと思います。常になんとなく落ち着かないところがあったというか。12時とかに起きて、「あー…人生しんど」とか思って一日がスタートして、なんとなーくYouTube見たりして過ごしてる内に夜になって、みたいなことを繰り返していたんですよね。

ミヒャエル・エンデ(2007)『自由の牢獄』岩波現代文庫
Image: 岩波書店

ミヒャエル・エンデ(2007)『自由の牢獄』岩波現代文庫

酒井:で、なんとか自分で目的を見つけようとして、なんとなくインフルエンサーとかになろうかなと思ってた時期もあったんですけど…さっき言ったように、一人だとやっぱりしんどいんですよ。撮影するにしても何にしても。だったら会社とか組織で、みんなでなんかやるみたいな方がおもしろいんじゃないかって思って。

松田:へー。

酒井:それでニートやめて働いてみたら、やっぱり人と触れ合う機会は多いじゃないですか。それになんとなく仕事もあって、なんとなく忙しくて、裁量もある会社なんで自分でやってる感もあって。そうなると、今の方が日々充実してる感みたいなのはありますよね

松田:うんうん。

酒井:なんかニートって、自分でそういうのを見出さなきゃいけないというか、充実を実際の行動で作らなきゃいけないじゃないですか。それがたぶんしんどいんだと思います

c やっていることが「したい」こと

c 「している限りにおいてそれがしたいこと」ってどういうこと?

松田:あー、はいはいなるほど。

酒井:それに社会からの目とかも気にしちゃう人間としては、やっぱりしんどいですよ。

松田:ニートしてたときっていうのはさ、最終的には一般的な形で社会に復帰するだろうということを前提にしていたのか、あるいは場合によっては必ずしもそうではないっていう感じやったんか、どっちなん?

酒井:完全に後者ですね。全然社会人にはならないくらいのつもり、社会復帰する気ゼロくらいの感じでいました

松田:へー。

酒井:だからどうやって稼ごうって感じでしたね。楽して稼ぐ系でとりあえず時間を過ごしてみるか、インフルエンサーになって何かおもしろいことできるかなとか、そういう方向で考えていました。

松田:なるほど。

酒井:あと、今までお金がなくなる経験がなかったので、とりあえず所持金ゼロになるまで試してみようって気持ちもありました。お金がゼロになったらなんか変わるんじゃないかって思って…でもゼロになっても何も変わらなかったですね

松田:笑

酒井:それでいよいよお金がなくなって、ついに働き出したみたいなところもちょっとあったりします。

松田:なるほどなるほど。

酒井:なんか…人生今が楽しければいいかと言うと、ちょっと分かんないじゃないですか。

c 進歩主義的価値観と今ここの豊かさの対立

松田:うんうん。

酒井:そういう意味でも、自分がすごく停滞してる感があってしんどかった気がします。やっぱり日々に成長みたいなものがないとしんどいなって。

松田:そうかそうか。

酒井:松田さんはニートが楽しいって感じですか?

松田楽しいというか…でも焦りみたいなものはないな。まあニートというか、今の状況に対しての話としてね。

酒井:なるほど。

松田:し、将来は普通に働くかもみたいなことも全然考えへんな。そもそも先々のことにあんま興味が無い。

酒井:なんかその…キャリア的なことをどうしても考えちゃうんですよね。例えば松田さんで言うと、40歳になったときもずっとこのままでいるのか、話すのが好きなら論客っぽい感じになるのか、まあ分かんないですけど、おれならそういうふうに考えちゃうんですよ。で、もし論客とかになるなら、それに向けてもうちょっと違うことをやった方がよさそうじゃないですか

松田:うんうん。

酒井:そういうことは考えないのかなって…

松田:別にたまーには考えるよ。でも考えるけどさ、そもそも現時点で誰もしていないようなことをしているわけだから、その10年後20年後を、既に世の中に存在している何かとして想定するのってどう考えても妥当ではなくない?

本当の歴史は飛躍の連続である、非連続の連続である。独尊者はいつも現在の刹那において過去から未来へ躍り出る。彼は現在の一刹那において黒暗暗の真只中を切り抜ける。此一飛躍の中で所謂る「過去の歴史」なるものが、溌剌たる生気を取り返すのである。独尊者の巨歩は実に此の如く堂堂たるものである。何ものの閑人ぞ、敢て彼を干乾しにはせんとする。又何ものの「現実」主義者ぞ、彼を「過去」の棺桶の中に封じ去らんとする。

独尊者は「時」の流れに順はぬ、「時」の中に居ない。「時」は却つて彼の跡を逐ふのである。彼あるが故に「時」がある。彼の動くあとに「時」がのこるのである。彼には固より「時」をのこす意図も何もない、彼ほど現実の具体者はない。抽象せられた「時」なるものは彼を何ともすることが出来ぬ。彼の後へにくつついてまはつて居る。彼に追ひつかんといくらあせつても、彼はいつも「時」よりも一歩前進して居る。彼は「時」を使ふが、「時」は彼を使ひ得ぬ。昔趙州禅師は「諸人は十二時に使はれて居るが自分は十二時を使つて居る」と云つたが、その通りである。趙州は独尊者であつた。これが臨済の、「随処に主となる」である。別に何かのはからひがあつて、主人公となると云ふのではない。「自然法爾」底なのである。人間的に「主」とか「客」とか云ふが、独尊者の方からはそんなものはない。孤行独往である。それを人間――「時」――が跡から跡からと逐ひまはる。而してそれを「歴史」と云つて、それに一所懸命にくひ下つて居る。彼等は「時」の流れに溺れるものである。

Source: 鈴木大拙『時の流れ』

みんなこれ読んで目を醒ませな

鈴木大拙 『時の流れ』

酒井:うーん。

松田:今はそもそもそういう機会はなくなったけど、2~3年前まで「将来どういうことをしたいと思ってるの、何になりたいの」って聞かれることがよくあって、その度に「めんどくせえ…」って思ってた。

松田:その人が何者なんだっていうことに触れようとしているシーンで「何をしているの」「何がしたいの」って聞いても、どうせ何も明らかにはならんよな。人に聞くときも、自分で自分について考えるときも。

中垣:うん。

松田:そんなことよりも、今日への充実と明日への希望をもって夜寝られるように日々を送りましょうって話。

中垣:そうやんな。それで言うと自己紹介がほんま嫌いで。

松田:そういうことそういうこと。

中垣:趣味が何とかどういう会社に勤めてるとかどうでもよくて。そんなことより今日の朝ご飯に何を食べたか言いなさいって笑

松田:そっちの方がよっぽどしっくりくるよな笑

Source: commmon

人生の真相は、どこか将来ではなく今ここにあるのです

c 今日何をしたかが全て

酒井:はいはい。

松田:というのもさ、少なくともまだ誰もしていないことをすることになるだろうから、何にって言われても、それに対する分かりやすいラベリングとか説明は存在しないわけ

酒井:なるほど。でも一般的な感覚、すぐ思うところからすると、「え、じゃあ結局なんなの?」ってなっちゃうところはあるかなって…あー、でもそうですよね。説明する意味は無いって感じですよね笑

松田:そうそう笑 まさにそうしている限りにおいて、おれは自分のしたいことを知ってるもん。別に他人からいいじゃんって言われなくても、一人でもそうするし。

2019年11月22日
DEAN & DELUCA CAFE 六本木

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