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したいこと 人生 仕事

サラリーマンか否かは主題ではない

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きゅー:転職のことを真剣に悩むようになって、やっていることこそがしたいことって言葉が今グサグサきてる。

J-P・サルトル(1996)『実存主義とは何か』人文書院
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J-P・サルトル(1996)『実存主義とは何か』人文書院

c やっていることが「したい」こと

c 「している限りにおいてそれがしたいこと」ってどういうこと?

中垣:でも当時はしっくりきてなかったよね?

きゅー:その後冷静に記事を読んでみたら納得した。とは言え、今取り組めていないってことは君はそれをやりたくないってことだみたいな考え方は、ちょっとドライ過ぎて今でも違和感はある。

中垣:まあ極端な言い方ではあるよね。目に見える形で行動はしていないけど虎視眈々と計画を練っている、みたいな人には必ずしも当てはまらないと思う。

中垣:でも例えば…おれが会社を辞めたいと思ったとします。で、辞めたいけど、実際今すぐに辞められるわけがないってなって、そこで考えるわけやん。自分の中での落としどころとか、どうしたら実際に辞められるとか。これはアクションは伴ってはないけど、でもまあ趣味でもないなと。

みなと:うんうん、そうね。辞めるってことに対して、今すぐの実効性を伴ってはないけど、実行し得るものにしようというか…

Source: commmon

c 実効性のない「べき論」と、その人間らしさ

きゅー:なるほど。

中垣:ここでやり玉に挙げられてるのは、愚痴を言うのが趣味になっちゃってる人やね。

やり玉って言うなよ

中垣:例えば転職の話で言うと、今の職場でストレスもある一方で達成感や楽しさも感じていて、飲み会で「会社辞めたい」って言ってストレス解消してるだけみたいな人。そういうのって趣味っぽくない?

きゅー:確かにそうだね。

中垣:彼らに辞めたい理由を聞いても、テンプレの回答しか返ってこないからつまらんよね。会社辞めたい人をやってるだけというか。

河東:でもさぁ、将来のこととか考え出すとなかなか一筋縄ではいかへんよな。理屈は分かっててもうまく行動できないというかさ。

中垣:これは自戒も兼ねて言うねんけど、あんまり自分に期待し過ぎないってのが大事やなと思ってる。ネクストアクションに意味を込め過ぎずに、自分をただの乱数生成装置だと思って行動してみるというか

一方で、自分の人生の責任を自分で引き受けないで勝手にメタってるような、そういう主客分離的な無責任さはもちろん違うよ。

c 人生は直指人心、言葉にとらわれちゃいかんよ

河東:うんうん。

中垣:もちろんバジェット含め制約はあるから、実際に何でもできるわけではないけど、とは言え我々には保険が掛かりまくってるわけやんか

河東:保険って?

中垣:要は分かりやすく言うと学歴で、それがあるから転職で何回かミスったぐらいで無職にはならへんわけやん。さらに究極的に言えば日本国民っていう保険があるから、一応のところ飢え死にはしないわけやし

はたして本当にそうなのか、松田のレポ待ちです

河東:たしかに。

中垣:だから我々みたいな頭でっかちな連中は、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるぐらいのマインドセットでいた方がええと思うねんな。

みなと:同じことを就活のときにすげえ考えてたわ。製造業だし昭和な会社ってのも分かってたけど、最悪辞めればいいやと思って入社したのね

c 「コンビニバイトすれば大丈夫だから」

河東:確かに、みなとのとこって周りではあんまり聞かへん会社やね。

きゅー:「何者かになりたい」みたいな大いなる目標から逆算して入社するような会社じゃないよね。

みなとのインスタです

アンドリュー・カーネギー – Wikipedia

みなと:そういう大いなる目標みたいな幻想って、就活に起因するところも大きいんだろうなと思う。

きゅー:うんうん。

みなと:会社でのキャリアと個人的な達成をごっちゃにしてくる感じというかさ。

中垣:就活で成功するのって熱量あり余ってるアホか、ドライ過ぎるインテリやと思うねんな。つまり本気で夢見てる人か、「あんたはこう言ってほしいのね」って割り切って面接を受けられる人。おれは当時そこまで大人になれなかったから、ひたすら憤ってた。

みなと:うちの会社の面接って、基本的にカフェで普通に話す感じなのね。最終面接も、幼稚園から今までの間で何があったかをひたすら聞かれるだけっていう。

カフェで茶をしばくプロ集団である我々に外注してくれ

中垣:それいいね。

みなと:就活での面接のひとつの解な気がしてる。

中垣:でも就活に限らずさ、自己紹介は「今日の朝ご飯に何を食べたか」から始めるべきやと思ってるねん。学歴とか職業みたいなラベリングの話じゃなくて、より一般性が高くてかつその人のパーソナリティが反映されてる事実の話。

松田:その人が何者なんだっていうことに触れようとしているシーンで「何をしているの」「何がしたいの」って聞いても、どうせ何も明らかにはならんよな。人に聞くときも、自分で自分について考えるときも。

中垣:うん。

松田:そんなことよりも、今日への充実と明日への希望をもって夜寝られるように日々を送りましょうって話。

中垣:そうやんな。それで言うと自己紹介がほんま嫌いで。

松田:そういうことそういうこと。

中垣:趣味が何とかどういう会社に勤めてるとかどうでもよくて。そんなことより今日の朝ご飯に何を食べたか言いなさいって笑

松田:そっちの方がよっぽどしっくりくるよな笑

Source: commmon

c 今日何をしたかが全て

河東:その通りやんね。職業なんて、そいつが何者かについてほとんど何も表してないもんね。

中垣:その途端にゲームになっちゃうからね。

河東:でもさ、中垣ってサラリーマン自体そこまで嫌いじゃないやん?

中垣:うん。

サラリーマンだからな

河東:キャラ的にはもっと尖った仕事して、サラリーマンのこと切り捨てそうな感じやけど、そこが意外やってんな。

中垣:サラリーマンは悪いもんじゃないでしょ。ある意味何も生み出してないのにお金入ってくるし。

あくまで個人のリソース配分の観点でサラリーマンを選択するのは悪くないという旨の主張であって、制度としてのサラリーマンの是非は全く別の問題です。

みなと分業すげえって感じだよね

マット・リドレー(2013)『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房
Image: Amazon.co.jp

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中垣:あとおれは学校が超好きなのね。校区が同じってことしか共通項がない人たちが、とりあえず毎日同じ場所に集まって話すみたいなさ。

みなと:うんうん。

中垣:そんな感じでとりあえず集まって、夜になったら帰って、よく分からん達成感を感じながらネットサーフィンするってのが一番幸せ

河東:分かるわぁ。自分の仕事が会社の収益にどう繋がるか全然分からへんもん。みなとも自分では鉄作ってないもんな?

みなと:1ミクロンも作ってないね。

逆に1ミクロン単位で作れんのかって話ですよ

中垣:なんかさ、みんなサラリーマン神話とアンチサラリーマン神話に毒され過ぎやと思う。どっちが正しいとかどうでもいいやん。怠惰な人間なら普段はサラリーマンやっといて、活力あるときだけ興味あることに取り組めばいいし。

中垣:で、前から言ってる話として、ニートしてたときと働き出してからやと働き出してからの方が楽みたいな話があるけどさ、自分が何かに取り組む理由を自分では作り出されへん、要は自分で自分のけつ叩かれへんような人は、そこはもう外注しちゃっていいんじゃないかって思ってて。

松田:はいはい。

中垣:そこで全体の何割を外注するのでもいいんだけど、残念なことに一般的には普通に会社勤めをするかフルで自分でやるか、つまり一週間の内の7分の5を外注するか全く外注せずに自分でやるかの二択しかないわけ。それでもまあ7分の5を外注するんがしっくりくるんなら、それはそれでいいんじゃねって話。

Source: commmon

c 「辛い」の構造的な欠陥

みなと:アンチサラリーマン神話って要は「サラリーマン辞めて本当に自分がやりたいことをやろう」みたいな語り口のことだよね? 逆にサラリーマン神話って何?

中垣:いわゆる終身雇用・年功序列とか、とりあえず大企業に就職しましょう的な、高度経済成長期っぽい世界観のこと。

みなと:なるほどね。

中垣サラリーマンやりたきゃやればいいし、辞めたきゃ辞めればいい。ウダウダ言ってんのは全部趣味。

みなと:そうだね。

中垣:ただまあ今みたいな話って、ある程度学歴があって、サラリーマンの一言で括られる職業の中でもかなり選択の自由がある側に属してるから言えるんじゃないか、みたいなことはいつも懸念してる。

なつき:生存者バイアス的なね。

中垣:そうそう。

みなと:そんなことない気もするけどなぁ。

生存者バイアスについてはまた改めて

2021年1月某日
某所

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