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ことば ファッション ファニチャー 思索

部分と全体の罠

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中垣:複数性の話とはまた別にさ、コラージュについての話というか…つまりひとつひとつの要素を見るのか、系全体を見るのかっていう話もある気がしていて

c マジカルナンバー“3”と、複数性とラベリングの罠

松田:はいはい。

中垣:それで最近さ、この前クラブハウスで言ったみたいに、ネット上で気になった画像を全部プリンターで印刷するっていうのをしてるねんけど…

Pinterestやスクショでは満足できなくなった男

松田:うんうん。

中垣:で、おれはそれを「ファッション」「空間」「その他」の3つに分類したのね。「ファッション」はそれを着たいと思えるもの、「空間」はそこにいたいと思えるもの、あとはそれ以外が「その他」で。

松田:はいはい。

中垣:…やねんけど、服を着てる人が写ってるけど「ファッション」には分類されないものとかもあるの。それはなんでかって、そこに写っている服というよりかは、写真自体の色味とか後ろに写っているものとかも含めてその全体を愛しているのであって、それをパカって開けたときに一部として存在している服だけを愛しているわけではない、みたいな感じやねん。

松田:うんうん。

中垣:なんかそういうことをすごい思ってて…例えばランウェイの完成されたスタイリングを見て「いいな」と思っても、それは別に、その服をいいと思ったわけでは必ずしもないというか。

松田:はいはい。

中垣:そういうことって結構起こりがちで…さっきの複数性の罠って、そういう話とも通ずるんかなって。

松田:あー…

中垣:つまり、松田が愛していたのはひとつの特定のディテールなのであって、それらがぐちゃっとまとまって存在している「そのアーティストのジュエリー」を愛していたのではないのかもなって。

松田:あー、なるほど。

中垣:でも人によっては、例えば安物のアクセサリーしか持ってない人が自分のアクセサリー置き場にエルメスを置くことで、なんか全体が輝いて見えてきたみたいなこともあると思うねん。それは逆に系全体を愛していると言えるというか…あれ、ちょっとちゃう?

c 今買うべきジュエリー

松田:笑 うん、その話にも接続できる気はするけど…スムーズにつながってはいない。

中垣:まあその罠には気を付けようってことを自分では思ってるねんな。その服をいいと思っているのか、その服と一緒に写っている植物も込みで全体のビジュアルをいいと思ってるのか。それを見て良い印象を受けたということは分かるんだけれども、そのエッセンスを洋服という一部からのみ抽出できるのかは結構怪しくて

キムタクが着たものをそのまま着てもかっこよくはなれないんですよね

c オタクのハットとファレルのハット

松田:はいはい。

中垣:それはすごくよく思う。

ロバート・B・チャルディーニ(2014)『影響力の武器』誠信書房
Image: Amazon.co.jp

ロバート・B・チャルディーニ(2014)『影響力の武器』誠信書房

かのこ:なんか展覧会とかに行って、赤い壁に掛かっている絵をいいと思っても、その印象は壁の色も込みのものであって、絵だけを見ると言うほどよくはなかったんじゃないかみたいな…そういうことは確かにある気がする。

中垣:そうそう。

松田:うん、そうやな。おれはそのアーティストのジュエリーを買った時点で「うわすげぇ」ってなったんだけど、その感動を再生産するにあたって「そのアーティストのジュエリー」っていうタグに頼ることになったから、まあ確かに似た経験は再生産されるんだけど、だんだんとそのタグ自体が強くなってきて…

みなと:なるほどね笑

松田:それがいくつか集まったとき、もはやそれらに共通する「そのアーティストのジュエリー」っていうタグしか残っていなかったっていう。

みなとベン図の重なりがそこだけになっちゃってるっていうね

松田:そう、そうそう。

ベン図 – Wikipedia

野矢茂樹(2019)『論理学』東京大学出版会
Image: Amazon.co.jp

野矢茂樹(2019)『論理学』東京大学出版会

中垣:確かに。だから最初に手にしたやつを…例えば「泥団子に似てるな」って思ったら、次は泥団子を買うべきやったんやね

かのこ:笑

松田:いや、ほんまそういうことやねん。あとはひとつひとつに名前をつけるべきやったね。ジョン・ボブ・メアリー…とか。

かのこ:笑

中垣:そうなったら一緒に並べて置かへんもんね。ジョンにはジョンの置き場があって…

松田:せやねん、それで並べたのもよくなかってん。

中垣:よくないね。

みなと:でも中垣ってそういうの上手そうだよね。

中垣:まあそういうコストは払うタイプやね。

松田:しかしミスったな…しかも同種の別の物が複数あると、それぞれの良いところを組み合わせた「僕の考えた最強の〜」が想定されてまうねん

みなと:笑

中垣:分かるわぁ。

ぼくのかんがえたさいきょうの – ピクシブ百科事典

松田:「これは技術的には申し分がないねんけどサイズがやや大き過ぎる」とか「作りは凝ってるねんけどデザインが好みじゃない」とかね。

中垣:あれやろ、女の子がいっぱい載ってる写真を見て「全員可愛いやん最高」とか思ってたけど、よく見たら誰も可愛くないあれでしょ

インスタあるある

みなと:分かる笑

中垣:この子はどこがよくて、あの子はどこがよくて…みたいな。

みなと“““女の子”””を見てたっていうね

かのこ:笑

中垣:でもファッションフォトとかもまさにそういうことやんね。あれは結構騙されるよ。

松田:まじで罠やわ。

中垣:もちろんそこまで含めて再現できるのであれば別にそれでもよくて、空間とかやったらそれができるねんな。光の入り方も含めていいなと思ったら、それも込みで再現すればいいし。

中垣:店員が愛想悪いとかじゃないねんけどね。でもそこのお店もすごくて、アメリカンダイナーというか「アメリカにはよくあるあの感じ」やねんけど、それをほぼまんま再現してるし、その上でちょっと今っぽさもあって、よくそんなことができるなというか…

松田:はいはい。

中垣:ほんまにすごいと思うよ。エンドツーエンドって言うとあれやけど、もしあの感じを言語に落とし込もうとしたらすごく大変やねん。それを言語を介さずに「あの感じ」のまま再現してる、そこがすごいよね。

松田:うんうん、なるほどな。

中垣:壁紙とかも「この壁紙にしたらその感じになるってよくまあ分かったな…」って感じやねん。これはおれには選べないよ…

Source: commmon

もっと前言語的フィールを鍛えないといけない

c オリジナルの持つ複雑性とそれを複製する難しさ

中垣:ただファッションやとね、どうしても着ることでしか再現できないから。

松田:しかし…言葉の恐ろしさを感じたね。数を揃えた瞬間に解像度が下がって、一気に抽象化されてしまったもん。

中垣:笑

2021年4月18日
Caffè & Trattoria Michelangelo 広尾

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