みなと:ちょっと今日話そうと思ってたことがあって、前に舐達磨についても似た話があったんだけどさ、
松田:うんうん。
「間違ってることを正しいと謳わない」
みなと:
松田:うんうん。
みなと:みんなが良いと思っているものに対して、別にわざわざ悪いとは言わないにしても、良いと思っていない以上そうは言わないというか。
松田:うんうん。
みなと:もちろん、それを良いと思ったらそのときはそう言えばいいと思うんだけどね。つまり今ここの私を、変にそっちに合わせにいくべきじゃないというか…
河東:いや分かるわ。おれ今どんだけ偉い人に会っても「…はあ」って感じやねん。「その線では立派にやってはるんですね」って。
倉留:笑
松田:そう、ほんまそう。
河東:「僕は僕で、河東という線では結構やらしてもらってるんですよ」って感じ。「それなりに幸せな瞬間もあるんです」みたいなさ。
Source: commmon
c 「僕は僕で、僕という線では結構やらしてもらってるんですよ」
松田:そうやんなぁ…てかおれも、最近どこかで勇気がキーワードとしてあがってんな。
A good answer takes the following form: “Most people believe in x, but the truth is the opposite of x.”
Source: Peter Thiel(2015)『Zero to One』Virgin Books
みんなもこういうことを教えてよね
Peter Thiel(2015)『Zero to One』Virgin Books
みなと:うんうん、僕の考えてる勇気もそんな感じだな。なんか
松田:あの本は依然としてすごくいいよね。
岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
みなと:前にシン・エヴァを観てから、『嫌われる勇気』について考えることがあって…今まであの本の中で言われている勇気について、分かるようで分かっていない部分があったというか。
松田:あー、はいはい。
みなと:それでシン・エヴァの話を松田としたときに言ってた、
松田:うんうん、それは間違いないね。
みなと:確信していることをやる勇気というか…
松田:うんうん
みなと:それを表すのに、個人的には勇気っていう言葉がしっくりくるんだよね。
松田:全体性を引き受ける覚悟というかね。なんか『臨済録』の中に、
祇如今有一箇佛魔、同體不分、如水乳合、鵝王喫乳。如明眼道流、魔佛俱打。你若愛聖憎凡、生死海裏浮沈。
祇だ如今一箇の仏魔有り、同体にして分かたざること、水乳の合するが如きも、鵝王は乳を喫す。明眼の道流の如きは、魔仏俱に打す。你若し聖を愛し凡を憎まば、生死海裏に浮沈せん。
たとえばここに仏と魔が一体不分の姿で出てきて、水と乳とが混ぜ合わさったようだとする。そのとき鵝王は乳だけを飲む。しかし眼力を具えた修行者なら、魔と仏とをひとまとめに片付ける。君たちがもし聖を愛し凡を憎むようなことなら、生死の苦海に浮き沈みすることになろう。
Source: 入矢義高訳註(1989)『臨済録』岩波文庫
全員買え、100回読め
みなと:一般的に言って、分かりやすいラベリングってノイズとしてすごく入ってきやすくて、
松田:うんうん、そうやんね。本来的にはラベリングっていうのはさ、境界線のはっきりしない有象無象に対して、自分の意識なり選択の焦点を定めるために全く主体的に行使するものだというか…
みなと:うんうん。
松田:つまり、そうやって全く積極的に世界にとっかかりを作るための能力のはずなんだけれど、
みなと:何かをAとして選択することは、必然的にそれがĀではないと言い切ることにもなるわけで…
松田:うんうん。
みなと:それはもしかすると、他人と共有できないことである可能性もあるわけで。
松田:まあAって言うと一般性が高そうやからXと言い換えておくけど、
みなと:そうだね。
松田:でもそうじゃないねんな。既にあるAを選んでいる限りはあまりに蓋然性が高いというか…そんなん、わざわざ自分が実証する必要のなかった光景しか待ってへんねんな。
みなと:うんうん。
エストネーションのことです
松田:
みなと:うんうん。
松田:あとはやっぱ思うねんけど…人生の意味は、全てにおいて選択の中にあるねん。
みなと:あー、なるほどね。
松田:前から可能性を可能性としてのみ保持していることに意味は無いって言ってるけどさ…まあこれは当たり前やん。そのこと自体に意味があるんであれば、そんなん一生受精卵にとどまっとけって話やねん。
みなと:笑
松田:でもそうじゃないわけ、
みなと:なるほどね。
松田:まあ
みなと:うんうん。
中垣:前に、言葉は道だっていう話をしたやん。
松田:あー、したね。
中垣:つまり、通りやすいところもあれば通りにくいところもあるカオスの中で、なんとなくルートを選んでそこを踏んでいくと。
松田:うんうん。
中垣:で、それを見た人が「確かにここ通りやすいかも」って思ってそれに続いて、それがやがて踏み固められて道になると。言葉もつまりそういうもので、何かを概念としてコミュニケートしたいと思った人によって言葉が生み出されて…
松田:そうそう、そうやねん。
中垣:で、そのようにして踏み固められた道はやがてアスファルトで舗装されるんだけどその代わり、地形が変わって別のルートが通りやすくなっても、目的地が変わってその道が遠回りになっても、誰でも通れるように舗装されているその道を通るしかないみたいなことが起こるよねって。
松田:はいはい。
Source: commmon
c 言葉の意味
松田:そうじゃなくて、境界線を引いてそれを新たな価値Xとして凝固させることに、そういう意味においての選択にのみ意味があるねん。
みなと:うんうん。
松田:もちろん、そこで「じゃあ逆張りをします」って言ってもあかんねん。恵比寿に住んでるスタイリストが中古のボルボに乗るのはだめやねん。
みなと:そういう世界線があるんだ笑
松田:どうせ予算さえ許せば新型のゲレンデに、あるいはレンジローバーに乗るようなやつらやねん。そんなマインドで、予算と相談してvolvoに乗って「これはこれでね…」みたいな顔をして、それで秀和レジデンスに住むねん。ほんまクソやね。
お口が悪いよ…
みなと:なるほどね。
松田:でもそうじゃないんですよ、そんなん全然違うのよ。期待ゼロで買ったSEIYUのパックTが着るにつれて案外いい風合いになってくることに喜びを感じないといけないねん。
SEIYUで取扱のあるGeorgeのパックT、しっかりとした生地とカスっぽい色合いばかりのカラバリが最高なのです。港区や中央区では買えない服ですね。
みなと:うん、でもそれはそうだね。
松田:そのTシャツを着て、どういう経緯かは知らんが付き合い出したときには既に彼女が持っていたムーミンの絵皿に、冷凍のチャーハンを山盛りにして食うと。まあそれが人生とまでは言わんが…
あぁああヒモ脱却したいよぉおお!!!
みなと:それはそう、間違いない。本当にそうだと思うね。うん。
松田:最近はそういうことをすごく思う。
みなと:それに関しては僕もめちゃくちゃ思ってる。なんか前に話した同期とかも本当にそんな感じで…だからそういう意味においては、彼はむちゃくちゃ不安なんだよ。
松田:うんうん。
数十万円の時計()を買ったけどもったいなくて机の上に飾ったままで、転職活動をしようかクヨクヨ悩んでる同期がいるんだよ
みなと:それで、彼は下の階に住んでるからよくご飯に行ったりするんだけど、その度に…まあしばき上げるとまでは言わないけど、それこそ
松田:はいはい笑
みなと:あるいは
松田:うん、それも一方で真実やんな。何かが自分にとって間違いのない道標であって、何がなんでもそれを目指すんだと思って取り組んでいるのであれば、その理想と現在との乖離はあってないようなもんやからね。微分したときの傾きが間違いなくそちらに向かっているということだけで、言ってしまえば半ば成就してるわけ。
みなと:そうそう、そうなんだよ。
人生の線グラフにおいて最も重要なことは縦軸の値ではなく、任意の地点で微分した際の値が常に正であることだと思います。
松田:でもそうじゃなくて、そのギャップを感じながら「いつかあそこにたどり着ければな」というマインドでやっている限りは、それは一生そのままやねん。
みなと:そうだよね笑
松田:うんうん。
2021年7月31日
Aux Bacchanales 紀尾井町
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