中垣:ひろゆきのYouTubeを見てて思うねんけど、
松田:はいはい。
中垣:最近になって彼のことが分かってきた気がするねんけど、あいつは全部エンタメやと思ってんねん。言うたら全部どうでもよくて、
松田:はいはい。
中垣:煽って相手がキレて、「やっぱキレるんだ。あー、今日も美味い酒が飲める」みたいな。
松田:うんうん。
中垣:
ごめんなさい
松田:うんうん。
中垣:それを見てると
ゆめ【夢】
(イメ(寝目)の転)①睡眠中に持つ幻覚。ふつう目覚めた後に意識される。多く視覚的な性質を帯びるが、聴覚・味覚・運動感覚に関係するものもある。精神分析では、抑圧されていた願望を充足させる働きを持つとする。古今和歌集恋「思ひつつ寝ぬればや人の見えつらむ―と知りせばさめざらましを」。「―を見る」
②はかない、頼みがたいもののたとえ。夢幻。古今和歌集哀傷「寝ても見ゆ寝でも見えけりおほかたはうつせみの世ぞ―にはありける」。「―の世」「太平の―」
③空想的な願望。心のまよい。迷夢。「いたずらに―を追う」
④将来実現したい願い。理想。「海外雄飛が彼の―だ」「―を描く」
Source: 新村出編(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店
松田:「現」の対義語な。
中垣:そうそう。「夏草や 兵どもが 夢の跡」みたいな、そういう意味やってんけど、一方で英語の「dream」にはその意味に加えて「将来の夢」っていう意味もあって、
松田:はいはい。
中垣:で、それまで「将来の夢」みたいな意味では「志」っていう言葉が使われてたらしいのね。
松田:あー、なるほど。
中垣:だから孫正義は
松田:笑 まあそれはどっちでもいいな。ただのレトリックやし。
中垣:そう、だからそれはいったん置いとくとして、
松田:はいはい。
中垣:つまり、本来はそんなことに思い悩む必要は全くなかったんだけれども、
松田:うんうん。
中垣:そういう見方をすると、
松田:はいはい。
中垣:まして我々は、基本的な生活が脅かされるようなリスクはまず無いような環境で生きているんだから、
松田:あー…
中垣:これって、人間は乱数生成装置だっていう考え方にもすごく近いんだけど。
松田:まあ確かに、勝手に夢を抱いてそれに敗れて絶望するなんて、そんなことはせんでもいいとは思うねんけど…
中垣:うんうん。
松田:一方で、
中垣:うんうん。
松田:何を開き直っているんだ、というか。だから中垣が「全てはエンタメ」って言うとき、
中垣:あー、そういうことね。それで言うと…あくまでこれは禅っぽい話で、少なくとも虚無主義ではないと思うねん。
松田:はいはい。
禅って言えば納得する松田である
中垣:だって全てがエンタメになったところで明日からもおしゃれは楽しむし、別に日常生活はあんま変わらへんわけ。
松田:あー、なるほど。
中垣:でもとは言え、
松田:はいはい。
中垣:そうそう。一番恐怖やんね。でもあれやろ、一億総セミナー社会的な話でいくと、そういう人のことをこそ考えないといけないよね。
嶋田:何それ?笑
松田:一億総セミナー社会っていうのは、人類の生産性が向上した結果ベーシックインカムが導入されるなりして、基本的な豊かさが労働に依らずして得られるようになった先にある、全員が一分の一の自分を大事にして、自分とは何かという実存的な問いに答えなければならない…でもそういう重責ってどうしても一人では担いきれないから、そこで口の上手いやつが現れて、そいつが教祖になってその周りに信者が群がるっていう、そういう群雄割拠の世界のことやねんけど…
嶋田:笑
Source: commmon
中垣:それを変え得るのは、
松田:あー、まあそうね。確かに。
中垣:それでっていうんじゃないけど、なんか…フロムの言う「愛はただただ実践だ」みたいなのって、それはそうなんだろうなと思うねんな。
弘中綾香のコメントくそおもろいな
エーリッヒ・フロム(2020)『愛するということ』紀伊國屋書店
松田:うん、確かにあれはそういう形でも一般化できると思う。でもあれ、謎に名前が売れてるからみんな読んでるけど、読んだほとんどの人が納得はできてないと思うねんな。
中垣:そうやんね笑
松田:もちろん個人的には、
「手段がそのまま目的だ、とさえ私は言わない」などとツァラトゥストラをして言わしめたニーチェよりは、随分とっつきやすいと思います
中垣:いや、ほんまそうやんね。でもそうなると、
松田:それは別に変わらんのじゃない? むしろそこで開き直ってヘラっとしてるやつ、おれはこいつが一番嫌いやねん。超嫌い。
中垣:うんうん、それはそうやね。
松田:だから「ハァー…」とはなるねんけど、それをメタって見てる自分はいないねん。
中垣:それがむずいよな。むずいというか…そこの感覚は実際よく分からへん。
松田:あー、なるほど。
中垣:確かに悲しんで死ぬことはないにしても、
松田:変わらんと思うけどな…たぶん普通に悲しいねんけど、
中垣:あー、そういうことやね。
松田:おれは今悲しい、ジャストそれやと思うねん。まあそうやって言葉にしてる時点でやや危うさはあるねんけど、でもそういうことやと思う。これを友達に「しんどいんだよね」とか言って相談するとか、変にツイートするとか、そうなるともう違うと思うねん。それって主客が分離しちゃってるというか、
「時」を空間的に翻訳して水の流れに喩へて見ると、何だか解つたやうでもあるが、その実、問題は益々迷路に入るのである。川上が過去で、川下が未来だと云ふことに見たいのであるが、「時」の未来なるものは、まだ出てこないのであるから、川の水を山の上からでも見るやうなわけに話することは出来ぬ。川と云へば、両岸に沿うて川床がある、その上を水が流れて、そこに「川」なるものが出来る。「時」にはそんな川岸も川床も考へられない。而して又吾等は「時」なるものを川のやうに、「時」そのものから離れて、それを「時」の岸から見るわけに行かぬ。「時」の岸に上つて「時」の流れを見ると云ふときには、その「時」は現実性を失つてしまふ。なぜかと云ふに、吾等はいつも「時」そのものの中に居るのである。過去・現在・未来の三世に「時」を切つたり、またその外で「時」の流れなるものを一つの連続体として眺めると云ふことは、「時」そのものと、何等の関係をもたぬ抽象体の話をして居ると云ふことになるのである。
Source: 鈴木大拙『時の流れ』
中垣:はいはい。
松田:しかし『愛するということ』はちょっと謎やんな。何をきっかけに「大学一二年生のうちに読んどこうな」みたいな感じになったんかな。
中垣:あの感じって言うて東大だけなんじゃない?
松田:笑
中垣:恋愛にうまくエントリーできなかった教授達が、
松田:で、生協が企画した「教授が新入生に読んでもらいたい100冊」にあれが入ってくると。
中垣:そうそう。
松田:しかもあれ、読んで自分が納得しようとそうでなかろうと、後輩に勧めようって気持ちにはなれる本やと思うねんな。
中垣:あー、そうやね。
松田:
中垣:そうか、ミームってそういうことか。
松田:そうそう。ミームについては『無限の始まり』の文化の進化の章で詳しく書かれてるからぜひ読んでほしいねんけど、要はインプットすると必ず同じものをアウトプットするようになっていて、それによって再生産が延々と続くものがミームやねんな。
デイヴィッド・ドイッチュ(2013)『無限の始まり ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』インターシフト
中垣:当人がそれをどう判断するか以前に再生産が行われる感じか。
松田:たぶんそんな感じ。まあ功罪あるけど、言うたら commmon もミームっぽさは結構あると思う。
中垣:うわー、確かにね。でもそう考えるとミームっぽいものっていくらでもあるよね。
松田:逆に専門的な論文、これはミーム性にやや欠ける。
中垣:間違いない、ミーム性ゼロやね笑 あとは
中垣:それで思うのは、やっぱファッションっていいよね。それがどういいとか思う前に真似したくなっちゃうもん。
松田:前言語的にグッとくるもんね。
中垣:そうそう、その辺がすごく好き。
2021年1月16日
西麻布 中垣の家
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