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仕事 思索 生きづらさ

プライド、ああ難儀かな

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なつき:みなさんはさ…自分はこれくらいできるだろうと思っていたのに、実際には能力がなくてできないみたいなことないですか?

山岡:あるある。私もここ数ヶ月くらい、仕事はずっとそんな感じ。

中垣:具体的にはどういう感じなん?

なつき:おれにとっては簿記がそうで、絶対受かると思ってたんだけどなんか受かんないし…

山岡:笑

なつき:もう3回受けてるんだけど、なんか受かんなくて。

山岡:それめっちゃ落ち込むやつじゃん笑

簿記 – 商工会議所の検定試験

中垣:おれも…別にそんなことばっかりやけどな。「こんなんできるっしょ」と思うだけでやらなくて、結局何も手元に残ってない

中垣:そこが、つまり技術とプライドは本来なら常に一致してあるべきやと思うねんな。むしろ最初は逆やねん、技術がついてやっと認識が追いついてくるみたいなんを繰り返しててんけど、技術が伸びて「あれ、これ結構いけるな」ってなってくると、ある程度先まで見えてしまって、プライドが勝手に成長してしまうと。

松田:「やればできる」みたいなね。

中垣:そうそう。「やればできる」状態になってしまって、そのときにちゃんとプライドが打ち砕かれるような場所に身を移さないと、どんどん手を動かせなくなってくる。

みなと:そうね。

中垣:っていうのがあって、おれはそれをちゃんとしなかったのね。例えばセッションに参加して「おれ全然できないやん」って思うとか。で、一度膨らんだプライドを元に戻すのは結構むずくて、それは傷つくことやから。

Source: commmon

c 若いうちしかできない

松田:まあそうやね。そう考えると…簿記を受験してるだけなつきは偉いんじゃない?

中垣:まあ資格の勉強とかなら分かりやすいけどさ、それ仕事とかならどんな感じなん?

山岡この時間があればこれくらいのものは絶対に出せるはずだと思ってたのに、それができないってことはあるよ

中垣:あー、確かにそれはあるね。てか仕事って思ったより時間かかるし、かけたからといってできるわけでもないよね。

なつき:うーん…

中垣:おれなんか仕事が暇やからさ、集中したら17時までに終わることを22時くらいまでかけてなんとかやってるねんけど、忙しかったらそれもできひんやん。山岡やと時間なんて毎回カツカツでしょ?

山岡:まあそうだね。毎回毎回、7割しか仕上がっていない上にそれを出さなきゃいけない状況に追い込まれて、それを怒られ続けてる。

松田でもそれさ、そもそもそういうもんって見方はないん? そら頭で考える方がリーチはあるねんから、それと実際にできることのギャップは当然というか。

なつき:まあそれは確かにそうなんだけど…

松田:頭では10考えても、7か…下手したら6くらいしかできひんと。その構造をそのまま受け入れて、くよくよせんかったらええんちゃうの?

なつき:あー…でもくよくよしないためにはさ、理想の10を下げる方がよくない?

松田:いや、そもそもがそういうものと思えばいいって話。別に理想を下げなくても解決するよ。

なつき:いやー…それ難しくない? 難しいっていうか…

松田:難しいとかじゃないって、だってそれが事実やもん。

なつき:笑 だから…そこに葛藤は感じるけど、それはそういうもんって思うってこと? その葛藤も感じないってこと?

中垣:でもおれ的にはなつきを支持するな。普通に仕事してたらそうなるよ、やっぱ打ち砕かれてる感じがすごいもん。

松田:あー…

ニートは退場

中垣:いかに抽象的な思考ができるかとかとは関係の無い、地べたレベルの腕力みたいなのってやっぱあって、それがないとどうしようもないみたいなことがあるねん

松田:ほーん。

中垣:その腕力ってもう完全にトレーニングの世界やから、「あっ…できなかったですすみません」みたいな、そういう瞬間は全然ある。

山岡:うん。

松田:まあ分からんではないねんけど、じゃあそのギャップを認識して腕力をつけて、そうしたら理想もまた上がって…だからギャップ自体はあるもんじゃないん?

中垣:あー…それはあるねん。そうやねん、だからなつきの言ったように一回気持ちにくらった上で「でもそれはそういうものだから」って思って、どうしようか考えるって感じやねん。

松田:うんうん。

中垣:そのギャップが発覚したときに「まあこれはこういうもんでしょ」って感じにはならへんねん。だいぶこう…「あ、違うんすね」ってなるよ。

松田:あー、なるほど。

なつき:悔しいとか、そういう気持ちはすごい出てくる。

簿記に3回も落ちるやつの悔しいってなんだ?

中垣:おれはそれを待ってるみたいなところもあるよ。それがないとなかなか、やらねば感みたいなのが出てこないし。

松田:でもそれでやるんでしょ?

中垣:結果としてはね。

松田:じゃあいいやん。だからつまり…何に悩んでるんかが分からへんねん

中垣:あー、まあ悩みではないね。それ込みのプロセスって感じやね。

なつき:あー…まあまあそうね。ただ一方で、それが積み重なり過ぎると「あ、おれもうだめだ」みたいな、この壁越えられないかもってなっちゃうんだよね。

中垣それはなつきやからやで。なつき病やで。

なつき:みなさんはならないんですか?

松田:じゃあもうさ、ハムスター飼って仕事から帰ってきたらそれ虐めるとかしたらいい。

冗談だし、冗談としても許されるはずのない最低の発言ですはい

c ポリコレ時代のカルチャー像

山岡:笑

松田:そうやって達成しやすいことを準備して、効力感回復しとけばいいよ。

中垣:でもなぁ、なつきの言うのも分かるよなぁ。

山岡:私も全然分かる。月に一回くらい、やっぱりもうちょっとレベルを下げた仕事に変えようかなって思うもん

松田:へー。

中垣:それってくだらんねんけど、でも事実してはやっぱ大事やねん。勤めてるときの自分って今みたいな感じじゃなくて、人格を切り売りしたような自分やねん

松田:あー、はいはい。

c 一億二千万分の一の自分と、一分の一の自分

中垣:そういう気持ちでやってるから、そこがやられると…今の自分なら「辞めたるぜぇ」とか思えるけど、働いてるときの自分はそうじゃないねん。

松田:うんうん。

中垣:だから普通にダメージくらうっていうのはやっぱりあるよ。

なつき:そうだよね。やっぱその辺が難しくて、最近ずっと悩んでる。

中垣:でもさ、それこそ休職してたときってもっと顔死んでたやん?

なつき:あー、そうね。

中垣:でも今はそういうクリティカルな感じではなくない?

なつき:うーん…まあ今はなんとか乗り越えられるかなっていう状況だけど、いつか求められているものを乗り越えられなくなる日がくるんじゃないかなって不安がずっと片隅にある。まあ考えても仕方がないんですけどね。

中垣:じゃあそれとは別に…つまり仕事は関係なくさ、自分はこれができるとか、自分にとってはこれが大事なんだ、みたいなのは違うん? まあハムスターを虐めるのはちょっと違う気がするけど。

松田:笑

中垣:でも、それこそ自分はすごく可愛いハムスターを飼ってるんだとかさ。

なつき:仕事とは別にってこと?

中垣:まあ仕事の中でもいいけどさ、なんであれ自分の存在理由というか

前に振る舞ってくれたビールはおいしかったよ

c 自家醸造・脱アルコールビール・sober qurious

なつき:まあ仕事でも「おれはこれができる」みたいなのはあるんだけど、別におれじゃなくてもできることではあって…

中垣:それはさ、そもそも仕事ってそういうことじゃないん?

なつき:いや、そう。だからその意味では、存在理由には全然なっていないというか。

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中垣:別に仕事じゃなくてもいいねん。そもそも自分じゃなくてもできるかどうかはどうでもよくてさ。

なつき:だから生活全てにおいての存在理由…いやむずいなそれは。

我々が存在することに理由はないと何度言えば…

c 私の人生の意味

中垣:でも…例えば朝のコーヒーを飲んでる時間が好きとかってあるわけやん。別にそういう部分まで侵されることはないんじゃないん?

なつき:あー…でもなんとも言えない。やっぱりおれはずっとモヤモヤしちゃってる。友達と遊んでても頭の片隅にひっかかってるし。

中垣:でもなんか思うねんけどさ、別になつきのこととかじゃないねんけど、自信が無いとか自己肯定感が低いとか言ってる人って、たぶんめっちゃプライド高いよね

松田:うん。でも…それは本当になつきのことじゃないんかな?

中垣:…なつきのことやね。

山岡:笑

岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
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中垣:やっぱプライドが高いんやと思うねん。だってこの仕事は他の人にでもできるって…いやそんなん当たり前やん。それがサラリーマンの定義と言ってもいい。

松田:職場で30分に一回鼻くそほじったら? 自分に変な期待しなくなれそうやで。

中垣:ミーティングは絶対にパンイチとかね。

c 職場のトリックスターを擁護せよ

なつき:でも高くなったプライドってもう下げられないよね。

松田:いやいや下げられるよ。30分に一回鼻くそほじってから言えよ。

なつき:そういうことをしたら下がるんですか?

中垣:でもなんか…適当な服着てコンビニ行って、そのまま出かけなあかんようになったときとか、プライドだいぶ下がるよね

松田:そうそう。

中垣:「こんなんなんです、すんません」みたいな。

なつき:あー…

松田:だからプライドがあるって、実態とは違う何かに自己同一化してるってことでしょ。そうやって理想に自己同一化するみたいなのを排除すればいいんだから、例えばダサい服サイコロってうやつを作って毎朝振れば…

c 自分への興味を捨てることについて

フェラーリ:ブォーン🏎

松田:うるさいねん、鳩もびっくりしてるやろ。

山岡:笑

松田:…それで、そのサイコロでシャツって出た日には、持ってる中で一番ダサいシャツを着なあかんねん。

中垣:あ、そういうことね笑 でもどうする? それで本人的にはダサいと思ってた服が実はかっこよかったら。

松田:それは別にいいねん、本人がダサいと思ってることを無理矢理やるっていうのが大事やから。そんなん言い出したら、なつきが自分をかっこいいと思ってる日の服、ほんまにかっこいいかは知らんもん。

なつき:笑

松田:ダサいと思ってるときも、別にかっこいいと思ってる日とそんな変わらんよ。

中垣:でもそれはあるよね。そっちの方が気が抜けてて自然体でかっこいいとか、全然あるよね

松田:そうそう。

松田:一方で、結局今着てるのは1,290円で買ったユニクロのフリースなわけ。

みなと:笑

松田:でもね、これはこれで簡単には否めないリアリティがあって、なかなかしっくりきていいのよね。

中垣:いやー、分かるわ。

松田:それでたぶん、最終的な仕上がりについてならこのユニクロのフリースを着た方がおしゃれやねん。だって心が服装についていってるもん。

Source: commmon

c リアリティの無いおしゃれはただの孔雀

中垣自意識を原理的に排除するっていうのはほんまそうやな。問うまでもなく、常に自分がダサいことを確認させられてるみたいなね。

2021年9月5日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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